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ぬいぐるみ史に残る作品、といえば大げさになるだろうか。そんな珍しいクマのぬいぐるみが入院してきました。

秋も深まったある日、「お送りした写真だけでは体の壊れ具合が分からないでしょうから」と、開催中の個展会場を訪ねてきた千葉市のI・Tさんの胸にはクマ子ちゃんが抱かれていた。

クマ子ちゃんを拝見してびっくり。体を覆う生地は全身がすれ切れ、触ると、ボロボロっといまにも破れ落ちそうで、かなりの重態になっていました。ボディの中身は、つまりぬいぐるみでいう「わた」は、木を細く削った年代を感じさせる茶褐色の「木くず」がしっかりと詰められ、ふくよかな表情とボディラインをつくっていました。木くずをいったん崩してしまったら元に戻せない。50年以上前の、ぬいぐるみ史に残るような作品、いまはない技術でつくられていた。

I・Tさんとよく相談しました。生地は従来のイメージを生かしたものを探すか、まったく新しいものにするか、簡単には結論が出ない。帰ってからも連絡をとりながら考えた末、生地にはムートンの毛皮を使うことになった。

縫い合わせで問題は顔や頭の立体感を出すこと。型出しを何度もしながら縫い上げ、木くずが50年もの間保ってきた体の線を生かえらせていく。

元気になったクマ子ちゃん、生地に毛皮を使った分、よりクマちゃんらしさが出た。I・Tさんも「イメージ通りに治りました」と喜んでくれた。私も50年前のクマ子ちゃんに出会えて、修理できたことはほんとうによかったと思う。いまは木くずを使える職人さんは数少なくなってきています。そういう意味でも貴重なクマ子ちゃんである。

治療前


全身がぼろぼろになっていたクマ子ちゃん、中身は「木くず」のクマ子ちゃん。半世紀前の職人技が偲ばれる

治療後


きれいな姿に生まれ変わったクマ子ちゃん