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 2回転(から3回転?)ほどひねり、後方上に向けてドリルのように伸びた長い角――。神様はなぜこのような角を与えたものか。雄同士の戦いで、武器としてよりも、自己の強さを誇示するためのシンボルとして発達したものなのか。角のひねりといえば、牛の仲間のイランドも短い角ながらひねりのような溝のある角を持っている。しかし、ブラックバッグの角はひねりといい、長さといい見事なものだ。

 なんとも不思議な角を持ったブラックバッグ。制作も一筋縄ではいかなかった。

 まず角のひねり。縫い上がった段階で自然にひねれていなければならない。針金を入れてひねりを作ったのでは、後でどうにでもされてしまい、製作者の意図と技術が見る人に伝わらない。同じ紙型を2枚使ったのではねじれは出てこないし、自然なひねりを作るため、2枚合わせる紙型を微妙に変える、などの工夫が必要だ。

もうひとつは角の取り付け方法の問題。根元(付け根)の処理で縫い込んでしまう場合は針金を入れられるが、後付けだと針金は使えない。また縫い込みでは角の先端がどこを向いてしまうかわからない。

 そんな苦労と思索を繰り返しながら、たくさんの角を作ってしまった。が、結局、最初に作った紙型に落ち着いた。一度作り、S・Nさんに送ったブラックバッグに納得がいかず、再度作り直し送った。いろいろ試行錯誤しても、最初につくったものが一番よかったなんて。作り終えておかしさがこみ上げてきたが、こんなものでしょう、ものづくりなんて。

 これは後日談・その1。納得はいかなかったのだが、最初に作ったものを、まず送った。送ってから、どうしても気になって眠れない。「納得できないものはお客様にお渡しできない」。そう思うと居ても立ってもいられず、S・Nさんに電話をした。「角を作り替えますから」と。S・Nさん「それじゃ、新しい角ができたら送っていただき、私が取り付けるのですか」というので、「新しいもう1体を作るということです」。S・Nさんも納得したようだが、申し訳ないが素人さんに付けられるようなものではない。

 後日談・その2.メールでお褒めの言葉をいただいた。「今度のブラックバック、すごく気に入りました。申し分ないです」。ありがとうございます。結局、自分が納得できないものはお客様も納得しない、という教訓を再確認しました。

《ブラックバッグ》 ガゼル類(ブラックバック族)。パキスタンやインドのアジア南部に生息し、開けた草原に15頭~50頭ぐらいの群れですんでいる。角は雄だけにみられ、強いひねりが入り、長いのが特徴。体の色は体の半分上側(背中)が雄は黒、雌は茶色と違い、体の下側(腹)は白い。体長100~150cm、体高60~85cm、体重25~45kg。

樹麻紅工房 ブラックバック